日本画家野長瀬晩花と熊野古道なかへち美術館
事務パートタイマーの玉置です。
文化の日に田辺市中辺路町近露にある
熊野古道なかへち美術館を訪ねました。
ちょうど『野長瀬挽花と国画創作協会の画家たち』展が
開催されているという情報を耳にしたからです。
野長瀬晩花(1889年~1964年)は中辺路町出身の日本画家。
若くして大阪に出て日本画を学び、
その後京都に移って、
京都市立絵画専門学校の第一期生となるが、
学校にはほとんど通わず、
独創的な作品を発表していったそうです。
日本画の手法の中に洋画の手法を取り入れ
大正期の日本画に新風を吹き込んだそうです。
晩年は、故郷への思いも強く、
近露(近野)の公民館に作品を寄進したり、
母校の校歌を作詞したりしたそうです。
この日も美術館に音楽(校歌)が流れていました。
美術館に音。新しい経験でした。
また、近露の人々も晩花の功績を讃え、
なかへち美術館は、開館当初から晩花の作品の収集や
地元ゆかりの画家の作品を
1000点も所蔵しているそうです。
展覧会の開催を通じて顕彰を重ね、
今年が開館から25周年を迎えるにあたって、
改めて晩花の芸術を振り返る展示にされたそうです。
晩花が創立に参画し、大正期の日本画に新風を吹き込んだ
美術団体「国画創作協会」に
関係した画家たちの作品も同時に展示されていて、
近代における日本画の革新的表現も知ることができ
これまでにも何度か晩花の展覧会を観てきましたが、
今回は企画展のコンセプトがはっきりしていて、
晩花の人物像がとてもわかりやすく作られていました。
この美術館から歩いて5分くらいのところに
晩花の生家も残っています。
現在は、ハンバーグレストラン『小鳥の樹』になっていますが、
今、流行りのリノベーションがされることもなく、
当時のままで使用されているというのも
現オーナーの心遣いのようです。
店内の一画には生家に残されていた晩花の展示コーナーもあります。
新宮市にもジャンルは異なりますが、同時期に活躍された
西村伊作、佐藤春夫の住宅が残されています。
しかし功績紹介がハイレベルで難しく伝えられていて、
市民には親しみやすいとは言い難く、
市民も尋ねられても口を噤む人が多いことに
いつも残念に思います。
晩花展は、郷土出身者を大切に思う人々の
郷土を大切に思う人への
気負わない、
しかし考え抜かれた企画展に
温かい心の通い合いを感じた日でもありました。